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2025年10月18日土曜日

Le Comte de Monte-Cristo


著者:Alexandre Dumas

刊行:1844 - 46年

評価:★★★★★

Kindle版(無料)

2025年9月24日読了

Le Comte de Monte Cristoは長編である。1844年から1846年にかけて新聞に連載され、18巻本として出版された。Kindle版はそれぞれ300~400ページの4巻(Tome I - IV)からなる。読了にかなりの時間を費やした。1年以上はかかったように思う。だがこの長丁場、途中で飽きたり、いやになったことはなく、毎日ページをめくるのが楽しみだった。新聞連載ということもあり、長いストーリーが多様に枝分かれしており、サスペンスの連続、山場がいくつも用意されている。

読むのが楽しみだったことは事実だが、なにぶんにも180年前のフランス語、読みやすかったわけではない。おそらく理解できたのは3分の2くらいで、残りの3分の1はただ活字を目で追っただけ。ストーリーの展開は基本的には非常に平易な文章で描かれているが、ちょっと込み入った場面になると、私のフランス語の能力では太刀打ちできなくなる。理解の妨げになったのは語学の能力だけではない。19世紀中葉のフランス社会の仕組みや慣習に対する知識の欠如も大きかった。特に、復讐相手のひとりが銀行家であることから生じるお金の貸し借り、投資などの場面になるとほぼお手上げだった。

獄中14年、さらにモンテクリスト伯として3人の復讐相手の前に登場するまでに9年。23年の歳月を経て恨みの3人と再会する主人公のエドモンド・ダンテス。3人はモンテクリストがエドモン・ダンテスであることにまったく気づかない。今時のリアリズムからすればひっかかるところだ。

復讐の的となった3人はそれぞれ出世し、相当な社会的地位を得ているが、その過程で悪行を重ねている。つまりは根っからの悪人だ。善人と悪人の区別ははっきりしており、善人が悪の側面を示したり、悪人が善の方向に踏み出すといった場面はほとんどない。

バルザックの「ゴリオ爺さん」は1835年、ビクトル・ユーゴーの「レ・ミゼラブル」は1862年にそれぞれ発表されている。ゾラの「居酒屋」は1876年だ。「モンテクリスト伯」とは10年から30年の時間差がある。この間に、フランスの小説がデュマ流の単純明快な勧善懲悪から自然主義、リアリズムの方向へどのように歩んでいったのか、探ってみたいところではある。