著者:Edouard Louis DEEE
刊行:2024年
評価:★★★★★
Kindle版(1320円)
2026年9月1日読了
著者:Edouard Louis DEEE
刊行:2024年
評価:★★★★★
Kindle版(1320円)
2026年9月23日読了
Edourard Louisの小説はそのほとんど(すべて?)が自らの体験に基づく「私小説」だ。2024年に刊行されたMonique s'évade(モニック、逃げる)とL'effondrement(瓦解)も同様で、前者は母親(Monique)の自立と自由への脱出、後者は兄の死を題材としている。
前作のQui a tué mon père(誰が父を殺したか)は自身の父親、Combats et métamorphoses d'une femme(ある女性の戦いと変身)は母親を扱っている。私はこれらのすべてを読んでいる。
Edourard Louisの小説の熱心な読者である理由は、なによりもまずその読みやすさにある。いづれも100ページ余りと長くなく、平明なフランス語で書かれている。私のフランス語力をもってしても、ほぼ辞書を参照することなく、どんどん読み進めることができる。
今回読んだMonique s'évadeは、2021年に発表されたCombats et métamorphoses d'une femmeの続編であり、著者の父親を追い出して「変身」した母親(Monique)がパリで一緒に住み始めた男から逃げる話しだ。この男もまた時間の経緯とともに酒と暴力で女性を苦しめる本性を露わにした。著者とその姉は母親を助け、小さな町に移住させる。50代になってはじめてひとりで住み始めた母親。ひとりになったことで自立と自由を実現できるかどうか、そもそも息子や娘に依存している生活がほんとうの意味で自立かどうかは疑問が残る。
「本性を露わにした」と書いてしまったが、男と一瞬邂逅した著者はその男の弱々しい姿に驚き、「この男もまた社会の構造の犠牲者ではないか」と述懐している。
L'effondrementは著者の兄の死を巡る物語だ。アルコール依存症の末、38歳で死亡した兄。兄は母親の初婚時の子供であり、著者とは父親が異なる。年齢も10歳ほどの差がある。
著者は兄とは10年近く会っておらず、死の知らせを受けたときにも、悲しみはもとより、何の感情も沸き上がらない。
にもかかわらず、兄がどんな存在だったのかを探るべく、兄と関係のあった女性たちとオンラインで連絡をとる。そこから浮かび上がってくる兄は、普段は”gentil”(優しい)だが、酒が入ると暴力的になり、手に負えなくなるという像だ。しかもいったん飲みだすとやめることができない。実の父親から会うことを拒否され、「誰からも愛されていない」と思い込むに至った兄。こうした思い込みが兄をアルコールに走らせたのか、それともアルコールがこうした思い込みを生み出したのか。
著者は最後に、まだ自分には知られていない兄の一面があるのではないかという疑念を述べてこの作品を終わる。
どちらの作品とも、わかりやすい叙述の流れの中に鋭い考察が組み込まれており、読み応えがあった。





















