5月26日。
朝方、宿の共有スペースで欧米系の若い女性を見かける。聞けばリヨン近郊出身のフランス人だとのことで、フランス語に切り替えてしばらく会話。観光客かと思ったが、そうではなく台湾在住4年で、宿のスタッフと流暢な(と私には思える)中国語で話していた。現在は台北の大学でデザイン・マネジメントを学んでいるとのこと。大学の授業はすべて英語だが、同級生のほとんどが台湾人であることから中国語を覚えたらしい。日本にはまだ来たことがないというので、ぜひ来るように勧めておいた。
さて、高雄で残された1日をどう過ごすか。宿の下にあるセブンイレブンで買ってきたカツおにぎり(カツを挟んだおにぎり)とアップルミルク(牛乳とアップルジュースのミックス)で朝食をとりながら、ガイドブックを見て検討する。
台湾は小さな島国だ。新幹線を使えば高雄から台北への日帰り旅行も可能だ。今日の行き先もなにも高雄市内に限る必要はない。高雄のすぐ近くに台南という比較的大きな都市がある。宿のスタッフに「台南はどうだろうか」と尋ねると、「台南は台湾の京都ともいえる都市で、訪れる価値がある」との答え。高雄から急行で30分、各駅停車で1時間ほど。列車の本数も多く、いつでも簡単に行ける。
というわけで、台湾最後の1日は台南行きにあてることにした。9時過ぎに宿を出て、急行で台南に着いたのは10時半ごろ。駅前のビルの電光掲示板には温度が33℃と表示されている。高雄も暑かったが、台南も暑い。メインストリートとおぼしき中山路を下っていく。途中書店があったので立ち寄る。冷房がありがたい。予想したとおり、日本の雑誌が少なくない。なぜか猫に関する雑誌が多い。そういえば猫カフェが誕生したのは台湾だった。
かき氷の店に立ち寄り、「日式抹茶氷」なるものを注文する。他のかき氷よりちょっと高くて50元(175円)。
やがて目指している孔子廟に到着。孔子に興味があるわけではないが、ただ街をぶらぶらするのではなく、ひとつくらいは名所にも足を運んでおこうと思ったからだ。中学生や高校生の団体に加え、ちらほらと観光客もいる。毛筆で書いた書を売っていた老人が私に日本語で話しかける。一目見ただけで私が日本人だとわかるらしい。
かつて台湾の首府でもあった台南にはほかにも史跡や名所が数多くあるらしいが、暑い中を歩いて探し回るまでの好奇心はない。台南の路地裏を少しうろついてから昼食をとることにした。時刻も1時を過ぎている。
駅に近い「本家台湾咖哩」というチェーン店とおぼしきカレー屋に入る。昨日もカレーを食べ、今日もカレーというのも芸のない話だが、前を通りかかったときに女店員に呼び止められたのと、カウンターに多くの客がいたのでおいしいのではと思ったからだ。
メニューの中でもっとも高価な「総合カレー」を注文した。300元。日本円にすれば1050円ほど。日本より食費がなべて3割くらい安い台湾にしては破格の値段だ。チキンカツ、豚肉のしゃぶしゃぶ、唐揚げ、ニンニク、ネギ、生卵、挽肉がトッピングされたなんとも高カロリーなカレー。満腹感に抵抗しながら何とか食べきった。
このカレー屋では4、5人の若く可愛い女性が働いていたが、客が入るたびに日本語で「いらっしゃいませ」と声をかける。客が支払いを終えて出て行くときには誰かが「お客様のお帰りです」と言い、それにあわせて全員が「ありがとうございました」と唱和する。すべて日本語だ。私に向かって言うのならわかるが、台湾人の客に対しても同様だ。
彼女たちが知っている日本語はこれだけ。食事を終えたあと、中国語で「おいしかったか」と聞かれたので、「おいしかった」と答え、つたない中国語で「あなたたちはどうして日本語で客を迎えるのか」と尋ねてみた。「この店のオーナーは日本人だから」というのが答えだった。あとでネットで調べると、本家台湾咖哩は台湾という名を冠しているものの、発祥地は名古屋らしい。
昼食後さらに街を散策する。名所旧跡はそっちのけで、暑さしのぎにデパートを覗いたり、カフェでアイスコーヒーを飲んで時間を過ごし、5時前に高雄に戻る急行に乗った。
宿に戻り、共有スペースにいた日本人女性2人と少し話す。ワーキングホリディで台北に滞在している女性とその友人ということだった。彼女たちは昨夜私が行って失望した瑞豊夜市に行くと言って宿を出て行った。私が瑞豊夜市に失望したのは実は市の定休日だったからだ。このまま終わるのもしゃくだ。そこで私も再度瑞豊夜市を訪れることにした。
巨蛋駅を降りて昨日歩いた道を再度たどっていくと、昨日とはまったく異なる賑やかな光景が展開されていた。これが本来の瑞豊夜市だ。観光客向けといわれる六合夜市よりはるかに大きい。射的や風船釣り、輪投げなどのゲーム場もある。昼に台南で食べた総合カレーのおかげで夜になっても空腹感はほとんどない。ホットドッグ(熱狗)をジャガイモでコーティングした大熱狗で夕食代わりとした。
8時半過ぎに宿に戻り、共有スペースで缶ビールを飲む。ひょんなことで隣に座っている30歳くらいの台湾人女性と会話になった。「会話」とはいうものの、女性は日本語も英語も話せない。したがって私の入門レベルの中国語と筆談による素朴きわまりないコミュニケーションだ。この限られた手段のコミュニケーションから得られたのは次のような情報。
女性は霧台で遭遇した青年と同様、台東に住んでいる。
息子と一緒に日本のディズニーランドを訪れたことがある。日本語も英語もしゃべれないので怖かった。海外は日本のほかにインドネシアとマレーシアを訪れたことがある。
日本の食べ物で好きなのは刺身と蟹。
私の名前の中国語読みが「好聽」(耳に快い)とのことで、ちょっと気をよくした。
私のほうからは北朝鮮旅行やアフガニスタン旅行の写真を見せた。
女性とは「明天見」(See you tomorrow)と挨拶して、それぞれの部屋に戻った。明日はいよいよ帰国だ。
朝方、宿の共有スペースで欧米系の若い女性を見かける。聞けばリヨン近郊出身のフランス人だとのことで、フランス語に切り替えてしばらく会話。観光客かと思ったが、そうではなく台湾在住4年で、宿のスタッフと流暢な(と私には思える)中国語で話していた。現在は台北の大学でデザイン・マネジメントを学んでいるとのこと。大学の授業はすべて英語だが、同級生のほとんどが台湾人であることから中国語を覚えたらしい。日本にはまだ来たことがないというので、ぜひ来るように勧めておいた。
さて、高雄で残された1日をどう過ごすか。宿の下にあるセブンイレブンで買ってきたカツおにぎり(カツを挟んだおにぎり)とアップルミルク(牛乳とアップルジュースのミックス)で朝食をとりながら、ガイドブックを見て検討する。
台湾は小さな島国だ。新幹線を使えば高雄から台北への日帰り旅行も可能だ。今日の行き先もなにも高雄市内に限る必要はない。高雄のすぐ近くに台南という比較的大きな都市がある。宿のスタッフに「台南はどうだろうか」と尋ねると、「台南は台湾の京都ともいえる都市で、訪れる価値がある」との答え。高雄から急行で30分、各駅停車で1時間ほど。列車の本数も多く、いつでも簡単に行ける。
というわけで、台湾最後の1日は台南行きにあてることにした。9時過ぎに宿を出て、急行で台南に着いたのは10時半ごろ。駅前のビルの電光掲示板には温度が33℃と表示されている。高雄も暑かったが、台南も暑い。メインストリートとおぼしき中山路を下っていく。途中書店があったので立ち寄る。冷房がありがたい。予想したとおり、日本の雑誌が少なくない。なぜか猫に関する雑誌が多い。そういえば猫カフェが誕生したのは台湾だった。
台南駅前
書店の中(なぜか猫関係の雑誌が多い)
かき氷の店に立ち寄り、「日式抹茶氷」なるものを注文する。他のかき氷よりちょっと高くて50元(175円)。
日式抹茶のかき氷
やがて目指している孔子廟に到着。孔子に興味があるわけではないが、ただ街をぶらぶらするのではなく、ひとつくらいは名所にも足を運んでおこうと思ったからだ。中学生や高校生の団体に加え、ちらほらと観光客もいる。毛筆で書いた書を売っていた老人が私に日本語で話しかける。一目見ただけで私が日本人だとわかるらしい。
かつて台湾の首府でもあった台南にはほかにも史跡や名所が数多くあるらしいが、暑い中を歩いて探し回るまでの好奇心はない。台南の路地裏を少しうろついてから昼食をとることにした。時刻も1時を過ぎている。
台南の路地裏
駅に近い「本家台湾咖哩」というチェーン店とおぼしきカレー屋に入る。昨日もカレーを食べ、今日もカレーというのも芸のない話だが、前を通りかかったときに女店員に呼び止められたのと、カウンターに多くの客がいたのでおいしいのではと思ったからだ。
メニューの中でもっとも高価な「総合カレー」を注文した。300元。日本円にすれば1050円ほど。日本より食費がなべて3割くらい安い台湾にしては破格の値段だ。チキンカツ、豚肉のしゃぶしゃぶ、唐揚げ、ニンニク、ネギ、生卵、挽肉がトッピングされたなんとも高カロリーなカレー。満腹感に抵抗しながら何とか食べきった。
総合カレー
このカレー屋では4、5人の若く可愛い女性が働いていたが、客が入るたびに日本語で「いらっしゃいませ」と声をかける。客が支払いを終えて出て行くときには誰かが「お客様のお帰りです」と言い、それにあわせて全員が「ありがとうございました」と唱和する。すべて日本語だ。私に向かって言うのならわかるが、台湾人の客に対しても同様だ。
彼女たちが知っている日本語はこれだけ。食事を終えたあと、中国語で「おいしかったか」と聞かれたので、「おいしかった」と答え、つたない中国語で「あなたたちはどうして日本語で客を迎えるのか」と尋ねてみた。「この店のオーナーは日本人だから」というのが答えだった。あとでネットで調べると、本家台湾咖哩は台湾という名を冠しているものの、発祥地は名古屋らしい。
昼食後さらに街を散策する。名所旧跡はそっちのけで、暑さしのぎにデパートを覗いたり、カフェでアイスコーヒーを飲んで時間を過ごし、5時前に高雄に戻る急行に乗った。
宿に戻り、共有スペースにいた日本人女性2人と少し話す。ワーキングホリディで台北に滞在している女性とその友人ということだった。彼女たちは昨夜私が行って失望した瑞豊夜市に行くと言って宿を出て行った。私が瑞豊夜市に失望したのは実は市の定休日だったからだ。このまま終わるのもしゃくだ。そこで私も再度瑞豊夜市を訪れることにした。
巨蛋駅を降りて昨日歩いた道を再度たどっていくと、昨日とはまったく異なる賑やかな光景が展開されていた。これが本来の瑞豊夜市だ。観光客向けといわれる六合夜市よりはるかに大きい。射的や風船釣り、輪投げなどのゲーム場もある。昼に台南で食べた総合カレーのおかげで夜になっても空腹感はほとんどない。ホットドッグ(熱狗)をジャガイモでコーティングした大熱狗で夕食代わりとした。
瑞豊夜市
8時半過ぎに宿に戻り、共有スペースで缶ビールを飲む。ひょんなことで隣に座っている30歳くらいの台湾人女性と会話になった。「会話」とはいうものの、女性は日本語も英語も話せない。したがって私の入門レベルの中国語と筆談による素朴きわまりないコミュニケーションだ。この限られた手段のコミュニケーションから得られたのは次のような情報。
女性は霧台で遭遇した青年と同様、台東に住んでいる。
息子と一緒に日本のディズニーランドを訪れたことがある。日本語も英語もしゃべれないので怖かった。海外は日本のほかにインドネシアとマレーシアを訪れたことがある。
日本の食べ物で好きなのは刺身と蟹。
私の名前の中国語読みが「好聽」(耳に快い)とのことで、ちょっと気をよくした。
私のほうからは北朝鮮旅行やアフガニスタン旅行の写真を見せた。
女性とは「明天見」(See you tomorrow)と挨拶して、それぞれの部屋に戻った。明日はいよいよ帰国だ。
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