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2017年2月1日水曜日

Stephen King: Doctor Sleep

2017年1月14日読了
著者:Stephen King
評価:★★★★☆
刊行:2013年
Kindle版

キングの作品は読みやすく、あまり外れがない。だから、さしあたって読みたい本が見あたらないときなど、つい手にとることが多い。おそらく今までに15冊くらいは読んでいるだろう。しかし、キングは多作であり、その作品の数はゆうに50を超える。したがってせいぜい4分の1くらいしか読んでいないことになる。まだまだ楽しみが残っているとも言えるが、正直なところ少し飽きてきた感じもしないではない。本書も期待に違わずおもしろかった。だがThe Green MileやUnder the Doomを読んだときのようなわくわく感は得られなかった。

本書はThe Shining(1977年)の続編である。Shiningは私がはじめて読んだキングの小説だが、20年以上前のことであり、内容はほとんど覚えていない。このため細部ではところどころ理解困難なところがあったが、読み進めていくうえで大きな障害にはならかった。ただThe Shiningをまったく読んでいない読者にとってはちょっとつらいかもしれない。

The Shiningのとき少年だったDanny(Dan)も今や中年。少年時の事件のトラウマもあり、その人生は順調とは言い難い。病院のorderly(用務員)として米国内を放浪する中で、アルコールにおぼれていく。かつて父親がたどった道を繰り返そうとしているのだ。

そのDanが断酒を決意して、ニューハンプシャー州のホスピスに職を得る。そして、彼と同様に、彼よりももっと強力なShining(一種の超能力)を有する少女と力を合わせてTrue Knotと呼ばれる邪悪な集団と戦う。

以上がストーリーの要旨だが、ここではTrue Knotに焦点を合わせたい。せいぜい2~30人のこの小さな集団は、外見的には普通のアメリカ人となんら変わるところがない。だがその実体は人間というよりゾンビや亡霊に近い集団で、何百年もヨーロッパやアメリカを流浪している。Shiningの能力を持つ子供を拷問して殺害し、その際に生じるsteam(「生気」とでも訳したらよいだろうか)を吸うことによって若返り、いつまでも生きることができるのだ。

したがって人間の側からすれば彼らと戦うことは「悪」と戦うことにほかならない。これほどはっきりした「正義」と「悪」の対立はない。

しかしちょっと視点を変えることはできないだろうか。True Knotの側から見たらどうだろうか。生き延びるために人間の子供の殺害が必須だとすれば、その行為を「悪」ときめつけるのはむずかしくなる。人間が生きるために植物や動物を犠牲にしているのと同じになってしまうからだ。

True Knotにはなぜか子供のメンバーがいない。これはちょっと不自然だ。子供がいると、彼らをすっきりとやっつけてしまうことが困難になる。

True Knotはキャンピングカーで米国の各地を流浪している。これはキャラバンで欧州を流浪するジプシー(ロマ)のイメージに重なる。True Knotとはある種のジプシーなのか。True Knotが子供を誘拐し、拷問し、殺害するのと同様、ジプシーには「子供を誘拐する」という噂がつきまとっている。昔の話ではない。ギリシャやアイルランドでジプシーの金髪の子供が実子ではないとして警察に「保護」されたのほんの数年前のことだ。

もちろんキングにこうした意図があると言いたいわけではない。人間中心主義から少し距離を置けば、このように意地の悪い裏読みも可能ではないかとふと思っただけのこと。

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