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2016年11月12日土曜日

ブルガリア・ルーマニア2016 九日目(ブカレストへ)

10月3日。

ブカレスト行きの列車は午後2時にシギショアラを出る。Pensiunea Jokerのチェックアウトは11時だが、昼過ぎまでいてもいいということだった。朝食後、観光スポット以外の、つまり旧市街(城塞)の外のシギショアラを散策する。人通りのほとんどない静かな朝。「猛犬に注意!」という貼り紙がしてる家が何軒かあった。静かで落ち着いた街並みからは想像もできないが、盗みなども珍しくはないのだろうか。

猛犬に注意

シギショアラの普通の家並み

12時過ぎに宿を出た。宿を出るときPensiunea Jokerの女主人(たぶん)と少し話す。女主人の話は昨日のドライバーが語ったことと重なる。ジプシーが嫌いであること、チャウシェスク時代のほうがよかったことなど。

こうした話を額面どおりに受け取ってよいかどうかはまた別問題。「チャウシェスク時代のほうがよかった」と言っても、あの時代に戻りたいと本気で考えているわけではないだろう。「昔はよかった」は現在に対する不満や不平の表れであり、そうした不満や不平を口にすることすらできなかった時代に戻りたいということではないだろう。どの時代、どの社会でも、不満や不平があるのはごく自然であり、不満がまったくないとされる社会(たとえば北朝鮮)にはどこか不自然なところがある。

宿を出るときに小雨が降り始めた。この旅ではじめての雨だが、駅まで歩くには支障がない。朝食をたっぷりととり、昨日購入したビスケットもあったので、昼食はとらなかった。

駅に行く途中で出会った女の子

列車は2時発の予定だったが、1時間遅延しているとのこと。駅に早めに来ていたこともあり、かなり長い間待つはめになった。その間、ひとり旅しているアイルランド人女性や中国の3人家族と話す。アイルランドには2種類のジプシーがいるという。1つはルーマニアなどから来たロマであり、もう1つはアイルランドに昔からいるtravellersと呼ばれる人たち。ロマとtravellersの関係はどうなっているのだろうか。travellersとはフランスのgens de voyageと同じなのかどうなのか。調べてみる必要がある。中国人家族は広東省から来ていたが、広東語ではなく普通話(ブートンホア)で話していた。

列車は3時にシギショアラを出発した。私のコンパートメントには先客が2人いた。60~70歳くらいの欧米のカップルだ。英語で話している。第一印象からして非常に好感の持てるカップルだったので、私のほうから"Are you from England?"と切り出した。"We are from Scotland"との返事。ちょっと身構えてしまった。スコットランドの英語は聞き取りにくいという先入観があったからだ。

ところが彼らと話していくうちに、まったくスコットランドの訛りがないことに気がついた。それもそのはず。カップルはもう20年以上スコットランドのエジンバラ近郊に住んでいるが、男性のほうは米国人で、女性はオランダ人だった。彼らも「最初はスコットランドの英語に苦労した」と言っていた。

話題は私の北朝鮮旅行から始まり、欧州の最近の排外主義的な動き、さらには米国の大統領選挙へと移っていった。オランダ人女性は「オランダはもともとオープンでリベラルな国として知られていたのに、そのオランダでさえ移民排斥の自由党が伸びている」と嘆いていた。米国の大統領選挙について私が「トランプが選ばれたらdisasterだ」と言うと、米国人男性は「米国にとってだけでなく世界にとってdisasterだ」と返す。「4年前にオバマを選んだ米国民がなぜこんなことになったのか」とも言っていた。

彼らの行き先はブカレストでなはく、シギショアラとブラショフの中間にある小さな町。2週間以上の日程でルーマニアを旅しているだけあって、いろいろなところに立ち寄ることができる。

彼らが下車するまで1時間余り話がはずんだ。オランダ人女性にAyaan Hirsi Aliのことをどう思うか聞かなかったことが悔やまれる。Ayaan Hirsi Aliはソマリアの難民としてオランダに移住し、国会議員にまでなった女性だ。その後、帰化の際に生年月日を偽っていたということでオランダ国籍を剥奪され、現在は米国に住んでいる。彼女は徹底的なイスラム教批判で知られる。現在の状況下、これは勇気のある主張であり、実際殺害を予告され、米国でもボディガード付きの生活を余儀なくされている。

私は彼女の著作を読んだことはないが、その講演や対談はYoutubeで数多く視聴してきた。無神論者としての彼女の考え方には同意できる点が多いのだが、現在の政治的コンテキストの中でこうした原理的なイスラム教否定がトランプ流のIslamophobiaにつながるのではとの一抹の不安も感じている。オランダのリベラルな女性が彼女をどうとらえているか、是非聞いてみたいところだった。

カップルが下車したあと、コンパートメントは私ひとりになった。

シギショアラからブカレストまで

1時間遅れてシギショアラを出発した列車は定刻より30分遅れの夜8時過ぎにブカレスト北駅に着いた。昼食をビスケットだけで済ませているので、腹が減っている。さっそく駅の食堂に入り、煮込みキャベツとハンバーグ(みたいなもの)を注文した。私の向かいの席に真新しいロマの服を着た女性と5、6歳のその息子が座っている。この母子はシギショアラの駅でも見かけた。子供のほうは東洋人がめずらしいのか、私のほうをじっと見ている。母親のほうも私に関心がありそうだった。声をかけたかったが、ルーマニア語をまったく解さない身ではあきらめるしかない。母子はスープとパンだけの質素な食事をとっていた。

宿は5日前に宿泊したHotel Sir Gara de Nordを再び予約していた。北駅から徒歩で3分。駅に夜遅く着くときには便利な宿だ。前回は前日に予約したためツインの部屋しか空いていなかったが、今回は数日前に予約したおかげでシングルルームを確保できた。値段もその分安く18ユーロ(トイレ・シャワーは共用)。

明日はいよいよ帰国だが、夜9時45分のフライトだからブカレストを十分に観光できる。

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