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2018年9月1日土曜日

イスラエル中東研修ツアー 九日目(講義、修了式)

8月9日。

今日は午前と午後の講義に続き、夕方7時にGalilee Instituteの本部での修了式が行われ、締めくくりにレストランで会食することになっている。

朝食後、9時からはじまる講義に先立って1人で昨日の夜とは反対方向にナザレを散策した。坂が多く、道は狭い。車の運転には苦労しそうな街だが、歩行者がいると停車してくれるのに感心した。

朝のナザレ

午前中は"Oslo Accord - Prospective after 25 years"と題するDr. Y. Hirschfeldの講義だ。

Dr. Hirschfeldは1993年のオスロ合意の立案当事者であり、1995年のベイリン・アブマーゼン・プラン(ベイリンはイスラエルの司法相、アブ・マーゼンはPLOのアッバス議長の通称)の草案作成にも携わっている。いわばオスロ合意を内側から見てきた人物だ。

Dr. Hirschfeldはオーストリア生まれであり、戦後のオーストリアで長年首相を務めたブルーノ・クライスキーとも知己の間柄だったらしい。「クライスキーと私は同じような境遇に育った。違いは私がシオニスト(Zionist)であるのに対して彼はそうではなかったことだ」と言う。

オスロ合意に至る非公開の交渉は1980年代にはじまっていた。そこから1993年の合意に至るプロセスが詳しく語られる。オスロ・プロセスの柱となったのは、(1)漸進主義、(2)パレスチナ人に権限を持たせること(empowerment)、(3)政府と民間のあらゆる領域におけるイスラエルとパレスチナの協力、(4)セキュリティに関する協力、(5)より広い中東地域を見据えたイスラエルとパレスチナの相互承認という5つの原則だった。

オスロ合意がなぜ頓挫し、今後の展望がどうなのかについては明確な説明はなかった。いや、あったのかもしれないが、私は講師から遠い最後尾に座っており、途中でよく聞こえなかった場面が多々あったというのが正直なところだ。

アラファトとも交渉したということなので、「アラファトは好ましい(likable)人物か」と尋ねてみた。

即座に「No」という答えが返ってきた。「実際的な(practical)面ではすばらしかった(brilliant)だが、人間としてはまったく信頼できない。今日言ったことが明日には覆る」とのことだった。

アラファトの人物像よりもっと重要なことも質問したはずだが、悲しいことにまったく思い出せない。

講義は11時過ぎに終わり、12時半から昼食となった。私たちグループ以外にホテルで昼食をとる人はほとんどいない。観光客が昼にホテルを空けるのは当然だろう。昼食はほぼ毎回同じ内容だった。まずくはないが、飽きる。

昼食

13時30分からの講義は"Hamas and Fatah: Roots and Orientations"というタイトルだ。講師はDr. Y Fiedman。ユダヤ人だが、アラビア語に精通しているらしく、講義はまずアラビア語の簡単なレッスンからはじまった。

ハマスについてもファタハについてもおおよその流れはあらかじめつかんであったので、私にとって特に目新しい話はなかった。できればハマスの代弁者の口から直接にハマスの主張を聞きたいところだが、イスラエルの地では不可能だろう。

Dr. Y Fiedmanにとってはハマスは交渉相手ではなく、壊滅の対象でしかないようだった。「ベストの解決策はエジプトがガザに侵攻してハマスをつぶしてくれることだ。もっともこうした策が実現する可能性は低い。イスラエルでも受け入れられないだろう」と言う。

他国の軍事力の手を借りてガザを片付けるという、まことに虫のいい方策だ。「軍事解決は解決ではない。より大きな問題、より大きなトラブルの出発点になるにすぎない」と、一応反論らしきものを述べておいた。

講義が終わってから、バスでナザレの西のNahalaにあるGalilee Instituteの事務所に向かう。修了式のためだ。 30分余りで事務所に着く。けっこう広い敷地の平屋の建物だ。夕方7時ごろだったから、中はがらんとしていた。女性3人が残っていて、簡単な挨拶のあと、ひとりひとりに修了証書と小さな蜂蜜の瓶を手渡してくれた。

修了式

近くのレストランで夕食となる。レストランの看板はヘブライ語のみで表記してあったので、名前はわからない。それなりに豪華な食事だったが、アルコールがないのがさびしい。

レストランで夕食

修了式を済ませたが、研修とツアーがこれで終わったわけではない。明日も講義と現地ツアー(イスラエル国内のアラブの村)が予定されている。

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