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2018年9月21日金曜日

北朝鮮観光ファンミーティング 二日目(マスゲーム)

9月9日。

昨夜就寝したのは2時近くだっただろうか。7時のモーニングコールまでぐっすりと寝た。入浴してから、8時過ぎに朝食の会場に行く。朝食はビュッフェ式。リンゴのサラダ、オムレツ、肉団子などに加え、なぜか大福のようなお菓子も。羊角島ホテルや高麗ホテルに比べれば料理のバラエティは若干劣る気もするが、まずは満足できる。

集合時間の8時40分近く、ロビーに出ると、Koryo ToursのSimonがいる。握手をし、今回は日本の北朝鮮観光ファンと一緒に来ていることを告げる。昨日空港で会った英国人女性もいたので、日本語で2、3言葉を交わす。

バス2台に分乗して、最初の行き先である中央動物園に9時過ぎに着いた。動物園を訪れるのははじめてだ。女性の案内員が私たちを迎える。

私たちが訪れたのは水族館と爬虫類館だけだった。肝心の動物園の本体には入らなかった。残念。別に虎やライオンに興味があるわけではない。虎やライオンを目の前にした北朝鮮の人たち、家族連れや子供の反応に興味があったのだ。水族館にも北朝鮮の来園者はいたが、建国記念日ということもあるのか(あるいは時間が早すぎるのか)、数は少なかった。

動物園前の北朝鮮家族

続いて動物園にほど近い遊園地に行く。帰国してから知ったが、大城山遊技場というらしい。凱旋青年公園遊園ほどの規模ではないが、民族衣装の試着や射的、ジェットコースター、観覧車などを楽しめる。ツアーの何名かはジェットコースターに乗ったが、私は遠慮しておく。お菓子やジュースを売っている売店では中国元で支払うことができた。

売店

遊技場をあとにしてスーパー(光復地区商業中心)に向かう。ここを訪れるのは3度目だ。午後1時まで、1時間45分の間たっぷり買い物を楽しめる。両替所があり、外貨を朝鮮ウォンに両替して買い物をする。前回は10ユーロを両替し、鉄道の旅に備えてかなりの食べ物や飲み物を買い込んだ。今回は5ユーロも両替すれば十分だろう。

1時間以上の時間があるので、3階のフードコードで食事することも可能だが、このすぐあとに昼食が待っている。明日の丹東行きの列車で食べる饅頭(のようなもの)と土産用のミルクキャンデー3袋を買うにとどめた。

ホテルに戻り昼食をとる。まだ2時になっていない。しかし、ガイドからは、いったん部屋で休み、4時に正装で集合するよう指示される。ただでさえ短い平壌観光の中でこの2時間の空白は痛い。あとで考えると、市の中心部はブロックされており、短時間で行ける適当な観光地もなかったのだろう。

正装だけではない。所持品をゼロにするようにとの指示も出された。カメラ、スマホはもちろん、財布、キー、その他ポケットには何も入っていないようにとのことだった。バスもこれまで乗っていたのとは別のバスに変更されるという。行き先は聞いていないが、おそらく5年ぶりに再開されるマスゲームだろう。通常のマスゲームなら写真撮影も可能だから、特別なマスゲーム、つまり金正恩委員長がお出ましになるものとみて間違いない。マスゲーム観覧料の100ユーロ(3等席)はすでに支払ってある。

両江ホテルからバスを連ねて到着した先は人民文化宮殿(この建物の名称は帰国後に知った)だった。ここでバスを降り、全員がいったん建物の中に入り、出口でひとりひとりボディチェックを受ける。所持品の有無を調べる検査だ。駐車場には何十台ものバスが並んでいた。バスの中でマスゲームのプログラムとチケットを受け取る。

マスゲームのプログラムとチケット

ボディチェック終了後、バスの群れはマスゲームの行われるメーデースタジアムに向かう。数多くの観光客が列をつくって入場を待つ。隣には香港から来た一行が列をつくっていた。そのうちのひとり、若い女性が日本語で話しかけてきた。旅行関係の仕事をしていて、日常的に日本語を使う機会があるらしい。日本を何回も訪れているということなので、「日本のどこがお気に入りか」と尋ねると、「高知」という答えが返ってきた。

正装という指示に従って、ジーンズをズボンに替え、ネクタイを締めてきたが、欧米観光客の服装はごくカジュアルで、ネクタイなしも多かった。

入場して席につく。チケットには座席番号は書いてなく、一定のゾーンの中で自由に座れる。

8時ちょっと過ぎ、ワァーという歓声とともに観衆が総立ちになる。金正恩の登場らしい。観覧席の中央に目をこらす。黒服が5、6人見えるが、どれが金正恩かわからない。彼をはっきりと識別できたというツアー同行者もいたから、見えなかったのは運転免許更新すれすれの私の視力のせいだろう。

総立ちになった観衆は手を挙げ、拍手をし、歓呼している。周りの外国人観光客も手をたたき、声をあげている。私も拍手した。が、この辺の心境は複雑で、自分でもちゃんと整理がついていない。

昨年4月の平壌の軍事パレードでは心ならずも一種の感動に襲われたものだ。そのときのブログから引用すると「世界からかつてなく孤立し、包囲されている国民が兵士たちに向けて手を振り、兵士たちが応える。この様子に不覚にも一瞬心を動かされた。」

今回のマスゲームではそうした「感動」はなかった。金正恩に向かって「マンセー」を叫ぶ気は毛頭ない。北朝鮮を好んで旅することと金王朝を支持することはまったく別だ。南北関係が融和に向かえばうれしいし、米朝関係の好転も切に望む。金正恩は残忍な独裁者だし、トランプも予測のつかないポピュリストだ。しかし、爆撃で朝鮮の問題を解決できるわけではないし、経済制裁も北朝鮮の一般の人々を苦しめるだけだろう。北朝鮮の側からしても対決姿勢だけでは出口が見えない。米朝関係の進展にしか北朝鮮の未来はないし、北朝鮮の大多数の人もそれを望んでいるだろう。望むらくは、米朝関係の改善が北朝鮮国内の抑圧の緩和につながることだ。

マスゲームの内容はすばらしかった。だが、このすばらしさの背景に平壌の生徒や学生、青年や成人のどれだけの犠牲があるのか。今日から10月の始めまで夜の8時から10時まで連日繰り広げられるマスゲーム。統一のとれた集団のみごとなシンクロナイズ。これほどのレベルに達するまでに要する膨大な練習の時間。マスゲームに参加する人たちはこれを犠牲とは思わず、時間の浪費とも感じず、名誉だと受け止めているのかもしれない。しかし私はいやだ。「集団よりも個」が骨の髄までしみこんでいる私にとっては耐えられない。

今回のマスゲームも為政者の政治的都合を反映したものだった。2010年に見たマスゲームは中国共産党との友好関係を強調したものだった。今回は中国との関係に加え、韓国や米国との関係改善が大きくクローズアップされていた。ICBMや核は登場しない。代わりに韓国の文大統領との会見の様子が映し出され(最初は写真かと思ったが、それほどまでにリアルな人文字だった)、アルファベットによる標語も登場した(私が覚えている限り、これまでのマスゲームにアルファベットは見られなかった)。Maltilateral Foreign Relation(多角的外交関係)やGlobal Independenceという英語が人文字によって表示される。Global Independencの意味が不明だったので、ひょっとしてGlobal Interdepenceだったのかもしれないと思った。しかしGlobal Interdepence(国際的な相互依存関係)が平壌のスローガンとして登場するはずがない。帰国してからグーグルで調べると、Global Independenceは金日成の外交政策として出てくる。その意味するところは....やっぱりよくわからない。

10時過ぎにマスゲームが終了してバスに戻るとき、危うく迷ってしまうところだった。JS Toursの社長がうしろから声をかけてくれたおかげで、やっと自分のバスに戻ることができた。あそこで迷い子になったらと、冷や汗がでる。

すっかり遅くなってしまったが、最後に夕食が待っている。万寿台創作社のレストランに着いたのは夜中の0時半ごろだった。このレストランで食事するのは3回目だ。アヒルの焼肉などの料理が並べられる。午前1時近くになっているにもかかわらず、歌や踊りのパフォーマンスがあった(写真撮影は不可)。

深夜の夕食
ホテルに戻ったときには2時を過ぎていた。明日は8時にホテルを出て、地下鉄と切手博物館を訪れてから、10時に平壌駅から丹東に向けて発つ。

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