10月28日
今日はエレバンへ戻る日。エレバン行きのバスやマルシェルートカ(マイクロバス)は中央駅前あるいはオルタチャラ・バスステーション(セントラル・バスステーション)から出るらしい。情報は錯綜していて、どちらが本命なのかわからない。ホテルの受付に尋ねると、オルタチャラではないかとのことだが、はっきりはしない。とりあえず宿から相対的に近い中央駅に行き、エレバン行きがなさそうなら、オルタチャラ・バスステーションに移動することにした。
中央駅前に着いたのが9時前。ネットで中央駅からは9時、11時、1時にエレバン行きのバスが出発するとの情報を得ていたからだ。確かにエレバン行きのマルシェルートカは停まっていた。しかし乗客はおらず、運転手は「11時発だ」と言う。9時から11時までの2時間をどう過ごすか。地下鉄で「自由広場」なる場所に行ってみたが、政府機関の建物がいくつかあるだけで、特に見るものはなかった。
11時前に中央駅前に戻るが、相変わらす乗客は誰もいない。しばらくすると、同じくエレバンを目指すバックパッカーがやってきた。20~30歳代のアイルランド人の青年で、ロシアを旅行したあとジョージアを経由してアルメニアに向かうという。旅慣れた感じの彼によると、「エレバンに行くにはここ(中央駅前)が一番確実」とのことだった。
彼は叔父2人がともにロシア人女性と結婚していることもあり、この物騒ぎな情勢の中、かなり長い間ロシアを旅行し、陸路でジョージアまでやって来た。ウクライナ戦争に関する彼の見解は西側から来た人間としてはユニークで、異端とも言えた。彼は言う。「ウクライナの戦争の本質は内戦(civil war)だ。ウクライナ人難民の最大の受け入れ国となっているのはポーランドやハンガリーではなく、ロシアだ。ロシアに逃れてきたウクライナ人は300万人に達する。プーチンよるウクライナ侵攻は問題だが、ロシア系ウクライナ人への差別や迫害こそがウクライナ問題の本質だ。」「ロシアの最大野党は共産党だ。」「ロシアへの経済制裁はほとんど実効性を持っていない。制裁の結果、ロシアからの天然ガスの輸入がストップし、苦しんでいるのはむしろ西側諸国だ。」
プーチンの主張と重なる部分が多いこうした見方をアイルランドから来た青年から聞くのは意外だった。しかし、ロシア系ウクライナ人が数多くロシアに避難しているのが事実だとしても、そのほとんどはプーチンによる戦争の結果ではないだろうか。
11時を過ぎても我々2人以外の乗客は現れない。1時まで待ってもおそらく同じだろう。オルタチャラ・バスステーションを試すしかないだろう。Yandexでオルタチャラまで行こう。
オルタチャラ・バスステーションでも状況は同じだった。エレバン行きのマルシェルートカには乗客は誰もいなかった。したがってマルシェルートカがいつ出発するか、そもそも今日出発できるかどうかもわからない。タクシー(白タク)が何台か駐車していて、エレバンまで200ドルで行くと言う。高すぎるのでこれは却下。
結局、アイルランド青年の提案で、国境までYandexで行き、アルメニアに入国してからバスないしタクシーでエレバンを目指すことにした。
国境に到着し、ジョージアを出国、アルメニアに入国した。我々以外の旅行者は誰もおらず、エレバン行きのバスも見当たらない。タクシー(白タク)が何台か待ち構えている。アイルランド人青年は日が暮れてからエレバンに到着するのを嫌い、ここらあたりで1泊すると言う。エレバンのホテルを予約済みの私は、そうのんびりとはできない。
アルメニア再入国
タクシーはエレバンまで100ドルとふっかけてきた。80ドルまで値切ったが、他に交通手段のない私としてはそこまでが限界だった(Yandexを試しても「この地域では利用不可」と表示されるだけだった)。
途中で運転手が交替するという場面もあったが、タクシーは予約したEurope Hotelまでちゃんと私を送り届けてくれた。
ホテルに着いたのは夜の7時。日はとうに暮れていた。8時過ぎにトビリシのホテルを出て、エレバンのホテルにたどり着くまで約11時間。今日一日をたっぷり移動に費やしたわけだ。
Europe Hotelは朝食付きで3泊約28000円。今回の旅で最も高価な宿だ。
Europe Hotel
受付の女性は日本人の私に好意的だった。彼女の友人が神戸に留学していること、留学後も神戸に残って働いていることなどを話してくれた。「日本の鹿の動画を見た」と言う。東大寺や宮島の鹿のことだろう。鹿と神社の関係について説明しようと頭をひねっている合間に他の宿泊客が手続きに来て、話はそのまま途切れてしまった。
Europe Hotelは共和国広場の近く、エレバンの中心地にある。先の滞在で何回もお世話になったセルフサービスのレストランに出向き、夕食とした。
夜の共和国広場
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