よろしければクリックしてください。
にほんブログ村 旅行ブログ 海外旅行へ
にほんブログ村

2016年5月19日木曜日

Hanya Yanagihara: A Little Life

2016年5月15日読了。
著者:Hanya Yanagihara
評価:★★★☆☆
Kindle版
刊行:2015年

著者はハワイ生まれの日系の米国人女性。ニューヨークを舞台とするこの小説に日本は出てこない。主人公たちはしばしばsushi restrauntで食事をするが、これは現在のニューヨークの日常の一風景であり、日本が意識されているわけではない。721ページの長い小説であるうえ、児童虐待や自傷行為といった暗いテーマにもかかわらず、2015年に米国でベストセラーとなった。

カレッジ時代に友人となった4人の若者のその後の人生が描かれている。4人が均等に描かれているわけではなく、実質的な主人公は孤児院に育ったJude。彼の子供時代の体験とそのトラウマが徐々に明らかになる形で物語りが進む。

読みやすい英語で書かれている。英語は私にとっては外国語だからノンストップで読めるというわけではないが、途中で挫折する心配なしに最後まで読めた。Judeが金持ちの息子の家庭教師をするエピソードがある。物語の本筋には関係のないエピソードだが、この部分を読むだけでYanagiharaのなみなみならぬ技量がわかる。

評価が星三つと厳しいのは、逆境の中でJudeが習得した並外れた知識や技能にリアリティが感じられなかったのに加え、彼を取り巻く人物の多くがtoo good to be trueであることへの違和感があったからだ。4人の友人がそろってそれぞれの分野で成功していることについても同様だ。the most depressing book I've ever readという書評も見かけたが、私にはほんとうの地獄はもっと別のところにあるように思える。

主人公と自分を一体化することはかなわなかったが、すぐに忘れ去るような作品ではない。久しぶりに小説らしい小説、どっしりと重いものを読んだ気がする。

0 件のコメント:

コメントを投稿