12月24日
ハノイ空港でやってしまった大失敗とは飛行機への搭乗を逃してしまったことだ。空港に着くのが遅すぎたわけではない。不慮の事態が発生したわけでもない。ただただ搭乗を逃してしまっただけだ。まことにまぬけな失敗だ。
ミスの原因は離陸時間をちゃんと確かめていなかったことにある。ハノイ空港のボード(標示板)を見て、1時40分離陸だと勘違いしてしまった。私のベトナム空港便は0時30分の離陸だったが、もうひとつ1時40分の格安航空のVietJetのOsaka行きがあったのだ。まさかこんな接近した時間にOsaka行きが2本あるとは知らず、1時40分が自分の便だと勘違いした。もっとボードを注意深く見るべきだった。それよりもなによりチケット控えを見て出発時間をちゃんと確かめておくべきだった。基本中の基本を怠った。
午前1時過ぎになってVietJetの搭乗が開始され、搭乗のチェックを受けたときに「これは別の航空会社だ」と言われ、初めて間違いに気づいた。
私の便はすでに飛び立っている。さすがに焦った。どこに連絡すればよいか。この場でコンタクトできるのはセキュリティチェックの係官たちしかいない。
係官に「飛行機に乗れなかった」旨を伝えると、「ちょっと待っていろ」とのこと。
20分くらい待っただろうか。女性の職員が現れ、入国手続きの場まで連れて行ってくれた。通常の入国審査はすべて終了している。窓口に現れた審査官は不機嫌そうに入国スタンプを押してくれた。業務が終わっているにもかかわらず再度呼び出されたわけだから不機嫌なのも無理はない。
こうしてベトナムに入国し、明かりはともっているが、店はすべて終了している入国ロビーに放り出された。人影もまばらだ。時刻は午前2時近く。
どこか泊まる場所を見つけ、明日早朝に改めて大阪へのチケットを購入するしかない。
往路で一泊したカプセルホテルに行ってみる。なんとか受付の女性を見つけたが、空いている部屋はない。タクシーで外へ出ようにもベトナムの通貨を持ち合わせていない。
両替カウンターは明るいが、誰もいない。しかしその横のもうひとつの両替カウンター(MSB銀行)に女性がいた。店は閉まっているが、この女性が窓を開け対応してくた。この女性に助けられた。
まず10ドルをベトナム通貨のドンに両替する。
「腹が減っているが、どこか開いているレストランはないか」と尋ねると、女性はお菓子を差し出す。そして「インスタントのヌードルでもよいか」と言う。
私は両替カウンターの前のベンチで、女性が湯を沸かせてヌードルを持ってきてくれるのを待つ。お金を払おうとするが、女性は「払わなくもいい」と言う。水も持ってきてくれる。
ベトナム人女性(周囲は明るいが午前2時過ぎ)
ラーメンをつくってくれた
やっと一息つき、女性と小一時間会話をする。両替カウンターで働いているにもかかわらず、女性は英語が堪能ではない。したがって「会話」は女性のスマホを介して次のような手順で行われた。
まず女性が私への質問をベトナム語でスマホに入力する。それが日本語に自動翻訳される。私が女性のスマホに日本語の音声で答える。音声はベトナム語に自動翻訳され、スマホに表示される。
女性は24歳。ハノイのXXX(忘れた)地区に住む。ハノイは騒音がひどく、空気が汚く、好きではない。
日本語の学習が始めたが、文字が難しく、あきらめた。で、今は韓国語に切り替えた。
そこで韓国語で少し話してみたが、女性の韓国語も会話レベルには達していない。「韓国語もできるのか。すごい」との反応。
私がベトナムのサパ地域に興味を持っており、モン族やアカ族に言及すると、女性は「私はキン族だ」と言う。キン族など聞いたことがない。なにぶんにもスマホの翻訳を重ねた会話だから、何かの間違いではないか思った。しかし帰国してから調べると、キン族とはベトナム民族を指すらしい。
こうして午前3時近く楽しく「会話」した。
私は両替カウンターの前のベンチで眠ることにした。女性は私に寝袋を貸してくれた。彼女はバイクか何か帰宅するものと思っていたが、自らもカウンターのうしろに引っ込んで眠りについた。ひょっとすると自分用の寝袋を貸してくれたのかもしれない。
寝袋付きでも眠れなかった。ちょっとウトウトしたくらいだ。5時を過ぎたので起床する。「チケット・オフィスの窓口が開くのは5時」と女性が言っていたからだ。
そんな早くから開くだろうか。半信半疑だったが、2階上の国際線フロアまで行ってみた。ベトナム航空の窓口は閉まっていたが、VietJetのカウンターはオープンしている。
大阪までできるだけ早い便のフライトを購入したいと伝える。今日の8時20分の便があるという。うれしかった。さっそく購入することにした。クレジット払いで、18248円だった。安い。
早速チェックインし無事帰国できた。今度は便名と搭乗時間を念入りに確認したことは言うまでもない。
クリスマスから年末年始という時節柄、もしかすると大阪の便は数日の間すべて埋まっているかもしれないとおそれていた。最悪、数日をハノイで過ごす覚悟もしていた。しかしその日の朝の大阪行きのVietJet便はガラガラだった。20~30%くらいの席しか埋まっていない。
本来のベトナム航空便なら朝6時すぎに到着の予定が、午後2時半の到着となった。入国時にファースト・トラックを利用するために必要なVisit Japan Webはラオスに行く前、日本で必要事項を入力し、審査済みだった。今回の帰国時にはQRコードの読み取りはなく、チラッと見せるだけでよかった。
まぬけなミスのために8時間のロスと18000円強の余分な出費。だが、その代償に若いベトナム人女性との楽しい時間を持てたことを考えると、必ずしも悪い経験ではなかった。自分のまぬけさが恥ずかしいことにかわりはないが。
今回の出来事で印象的だったのはスマホのグーグル翻訳を介してごく自然に会話できたことだ。まったく違和感のない会話だった。彼女がどんなベトナム語を入力したのかはわからないが、画面に表示された「おじさんは元気ですね」という言葉が忘れられない。
私が主体となってこうした会話を展開するのはむずかしい。スマホの文字入力が苦手だから。今の若者がやっているように両手の親指を使ってすばやく入力することができない。
ちょっと長めの文章はすぐにパソコンに頼ってしまうことの弊害だ。「スマホの文字入力は苦手」と言っておられる時代ではない。スマホ入力に慣れることは今後の旅に必須だ。
ベトナム人女性からはFacebookのアカウントを聞かれた。私はFacebookのアカウントを一応持ってはいるが、Facebook上の情報を見ることだけが目的で、実質的には使っていない。したがって「使っていない」と答えるしかなかった。
フィリピンではネット上の交流はほとんどFacebookを通じて行われると聞いた。インターネット=Facebookといった感覚だ。おそらくベトナムでも似たような事情なのだろう。
ともかくラオス南部の旅行はこうしたちょっとまぬけなコーダをもって終了した。
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